――「理想の器を焼く」より、「今日の薪を割る」。
陶芸家というと、静かな工房でロクロを回している姿を思い浮かべるかもしれませんが、現実はもっと“生活感”と“体力勝負”が伴う世界です。
まず、1日中ロクロだけを回しているわけではありません。
土をこねる、乾燥させる、削る、釉薬を塗る、焼く、薪を割る、後片付けをする…
しかもこれらをすべて一人でこなすのが当たり前。
「手で作品を作る」というよりは、**“日々のルーティンを積み重ねた先に作品が生まれる”**というイメージに近いです。
さらに、焼成(しょうせい:焼く工程)では徹夜になることも。
窯の温度管理は細かく調整が必要で、「寝たら終わり」という状況も珍しくありません。
収入面でも楽ではありません。
特に若手は、生活費や釉薬代、窯の維持費などでカツカツになることも多いです。
それでも続ける人がいるのは、「作る喜び」と「作品を手に取ってもらえる幸せ」があるから。
理想や憧れでは乗り越えられない、でも、それ以上のやりがいが待っている。
そんな“生きるように働く”のが、陶芸の現場です。