――最初は「手伝い」から。でも、1年後には「漁師」になってる。
漁師の世界には、大企業のような「研修制度」や「明文化されたOJT」はない。
でも、“目で盗み、背中で覚える”育成文化が、海の上にはまだ息づいている。
若手がまず任されるのは、
網の準備・魚の仕分け・氷の運搬・船の掃除など、いわば「漁の周辺業務」。
これだけ聞くと、雑用係のように感じるかもしれない。
だがこれらは、すべて漁の品質や安全に直結する重要な仕事でもある。
そして、数ヶ月〜1年も経てば、
徐々に仕掛けの投下、網の引き上げ、舵取り補助といった中核的な作業を任されるようになる。
ベテラン漁師が見ているのは、
「体力」でも「根性」でもなく、“海を読む目”が育ちそうかどうか。
潮の流れ、魚の動き、風の変化――
自然を相手にするこの仕事では、「経験」が最大の武器であり、「センス」が武器になる。
また、陸での出荷作業や地元市場との交渉、SNSでの直販アカウント運営など、
最近では若手の活躍の場が“海の上”だけではなくなってきた。
つまり、体を動かす力+時代に合った情報発信力が、若手には求められている。
“海の仕事”は、変わりつつあるのだ。